@mipsparc です。このたび「鉄道車両内ネットワークの基礎 ―列車内伝送系と列車制御管理システム―」を初の著書として執筆し、第一版をコミックマーケット95(コミケ C95)で頒布しました。
本記事では、執筆した本の内容の紹介と、私の初サークル参加の感想を書きます。

執筆の背景

鉄道車両(列車)内では、加減速制御情報、ドア開閉制御情報、放送音声情報など多数の情報が伝送されます。より多様化する情報を効率よく配信するため、近年は鉄道車両内部にネットワーク「列車内伝送系」が構築されるのが一般的となっています。
最新の鉄道車両では、Ethernet+IP+UDPによる列車内伝送系が使用されており、身近なインターネット系技術で構成されています。
ところが、列車内伝送系やそれを管理する列車制御管理システム(TCMS)についての一般の理解は乏しく、誤った情報が堂々とWikipediaに書いてあるような状況でした。そこで、どこにもない「列車内伝送系について予備知識なく読める本」を執筆することにしました。(Wikipediaは後で直しましたよ)

目的

本書は

  • 列車内伝送系と列車制御管理システムの歴史(MON・TIMSなど)
  • Ethernetベース列車内伝送系規格「ECN(Ethernet Consist Network)」とその実装であるINTEROS・Synaptra・TEBus
  • 各社で使用されている国際規格のプロトコル「TRDP(Train Real time Data Protocol)」

などについて正しく技術的理解をすることを目的としています。

対象読者

  • 技術や導入車両を知りたい鉄道ファン(適用車種一覧付き)
  • 産業応用例とリアルタイム制御を知りたいネットワーク技術者
  • 文献リストを知りたい鉄道関係者(参考文献として国内の列車内伝送系論文を網羅)

関係キーワード

E235系、227系、INTEROS、TEBus、Synaptra、ECN、ETB、TRDP、IEC61375、TIMS(列車情報管理装置)、ATI

目次

はじめに
列車でのネットワークの必要性
列車内伝送系とTCMSの歴史
主要なトポロジ
三菱電機 TIMS
JR東日本向けTIMSの種類
統一国際規格としての列車内伝送系
Ethernetの列車への適用
ECNの共通仕様
オープンソースプロトコルTRDP
ECNに準拠した鉄道車両
ECN準拠のTCMS INTEROS
無線通信による列車内伝送系
次世代の列車内伝送系を特許から探る
あとがき
参考文献

通販

BOOTHにて行っています。→ BOOTH販売ページ

執筆

もともとはサークルの部誌に載せるための原稿として作ったのですが、特に注目されることもなく、残念に思っていました。加筆してコミケで売ることで幅広い層にリーチできるのではないかと考え、Cpawから出すことにしました。
執筆にあたっては、CiNiiやJDreamである程度論文のあたりをつけた上で、国会図書館に複数回行って規格書と専門誌、論文集を読んで典拠にしました。
その後やつはしさんとuplusさんに読みにくい点などの指摘をもらい、修正を行いました。

コミケ当日

サークル参加したのは2日目(12/30)で、鉄道島ではなく情報島でした。私としては初参加のためあまり売れる気がせず、100部という冊数も冒険したものでした。なお、あらかじめTwitterで積極的に告知を行い、合計160RTくらいは行っていました。始まってみると開始直後から飛ぶように売れて、11時には取り置き分を除き売り切れとなりました。部数の予測は難しいです。

勝因

鉄道ジャンルは熱心なファンが多いのですが、その中で誰も注目してこなかった「鉄道車両内ネットワーク」という分野を初めて解き明かしたのと、事前の入念な告知が要因かと思います。
Twitterでは興味の持てそうなキーワードを散りばめた上で告知ツイートを早い段階で行うことで、拡散をしてもらえました。

執筆手法

執筆にはGoogleドキュメントを使い、整形と最終出力にはWordを使用しました。Googleドキュメントはプラットフォーム問わず書けるものの、印刷用のきれいなレイアウトが組めなかったためです。
入稿がWord形式でできるところは限られるので、PDFに変換しました。WordのPDF出力機能では裁ち落としを含む紙サイズが作れなく弾かれてしまったので、Adobe CCに課金してAcrobatの仮想プリンタから作成しました。非圧縮設定などもできるので良いです。
印刷会社への入稿は手軽で価格比較もできるpixivFACTORY BOOKSを使用しました。ツイートすると15%OFFになる特典と早割により、印刷単価はかなり安く抑えられました。

今後

すぐに第2版の出版を決めて、指摘をもらった部分を訂正した上で、1月4日に入稿を完了しました。春の技術書典でも告知してがっつり売るつもりです。
また、大幅に改定した第3版を夏コミで出す予定です。これの執筆をゆるりとしていきます。

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